占いビジネス詐欺にご注意

焦って大火傷をしないために

このブログはもうプロでバリバリ頑張っている、という占い師さんだけではなく、これから占い業を始めたい、あるいは始めたけれどまだ色々と戸惑っている、という人も読んでくださっていると思います。そうした方々にぜひ知っておいていただきたい、占い稼業につきまとうダークサイドへの警告です。占い師そのものが詐欺師だというとんでもないケースや、あるいは良心的に占いをしているのに心無い人に詐欺師呼ばわりされて悔しい、という発言はネット中にほぼ毎日のように飛び交っていますね。でも今回お話しするのは、占い師自身を詐欺にかける人たちへの注意喚起です。

占い業界は大きなお金が動くところです。それを外部から見ると、元手もなしで濡れ手に粟!ができると思う起業家(っていうか詐欺師もどき)の方も結構いるのは、いつの時代も変わらないような気がします。こうした人たちは、私のように経験が長くて人をすぐに信用しないタイプの占い師には寄ってきません。デビューしたてで経験が浅かったり、人を疑わないタイプの占い師さんの所にコンタクトを取ってきます。

そして、あなたを中心にしたウェブサイトを作りましょうとか、本を出してあげますよ、何々部は完売、固いです!といった話を始めるでしょう。あるいは、あなたがデザインした占いカードを出版しましょう!と提案してきたりもします。そんな事業ができるほどのお金はないです、とあなたがオロオロしても、大丈夫、あなたのために出資してくれる人はたくさんいますよ!と笑顔で保証することでしょう。

もちろん、こうした提案には具体的な数字や金額は提示されません。とくにメールのように後に残る形では情報を渡したりしません。メールには自分がいかにヴィジョンがあるか、先見の明があるか、だけが書き連ねられています。綺麗なスーツを着て、ホテルの会議室などで占い師さんに話はするけれど、勝手に話を進めるだけ。文書で占い師さんに具体的なビジネスモデルの了解を取るようなこともありません。

詐欺に遭ったら

結局、善良な占い師さんは、そのような人になんだかんだと理由をつけて資金を巻き上げられたり、自分が苦労して編み出した企画をとられたり、もっと酷い場合はその詐欺師が提案してくる霊感商法のお先棒を担がされる、ということになります。そうして資源と労力とプライドと評判を奪い去られた占い師さんの手元には、喪失感だけが残るでしょう。友達も失うことになるかもしれません。きっともう、占い業界でも生きてはいけないでしょう。そんな例は嫌というほどみてきました。

もちろん、総ての人が占い師を利用しようしているわけではありません。真っ当なビジネスをなさる人ならば、占い師さんが疑問をぶつけたら、具体的な数字を上げてどんなお仕事になるのかを説明してくれます。でもそんなことはせずに、疑問やトラブルにあった際に、あなた以外の誰それさんに頼んでもいいんだ、とか、そんな忠告した人は、焼き餅を焼いているだけだ、といった脅迫めいた言葉を投げかけたり、こんな素晴らしいビジネスチャンスを逃したいのか、それでもいいんだな、といった逆ギレや恫喝しかできないような相手とは、その場で関係を切る方が賢明です。

こうやって文字にしてみると、なんだか自分が口うるさくて嫌なお婆さんにしか過ぎないようにも思えてくるのですが、このような話を同業者にしていると、「頻繁に聞く悲劇であり、真面目な企業にとっても迷惑な話なので、若い方にしっかりと話してください」というご意見もよくいただくのです。つまり、それだけ頻発している事例なんですよ。

このようなトラブルは、どのビジネスにも程度の差はあれ、発生してくるものです。ただ、占い師はほぼ個人事業者で独りで仕事をしているという状態なので、第三者の視点が入らず、そのような人の餌食になりやすい傾向が強いのは否定できません。とはいえ、占い師側から見ると占い師を利用しようとする、あるいはカモにしようとするような酷いビジネスマンであっても、当の本人たちは別に、それほど周到な「悪意」を持って接近してきている訳ではないのも問題なのです。そのような人たちもたいていの場合はれっきとした社会人としての機能を果たしていて、身なりもきっと、普段とんちんかんなファッションをしがちな占い同業者よりもよっぽど、キチンとしている人たちでしょう。

こんな防御策を!

でもその人たちに決定的に欠けているのが「占い師を対等な人間としてみる気持ち」なんです。なので「一緒に儲けましょう!」という頼もしい言葉の真意は、その人だけが儲かる、ということになります。「素晴らしい仕事ですよ!」という誘い文句の裏側には、その人だけに素晴らしい結果が出る、という真実が隠されています。もちろん「絶対成功しますよ!」という励ましの言葉も、要はその人だけは成功するという予測でしょう。本人にとってそれは真実ですから、そのときの笑顔には嘘がありません。だからこそ、話を聞いている占い師側も、なかなか自分が被害に遭うとは思わないのです。

占い師は多くの場合、悩み、傷ついているお客様と向き合います。だから、占い師が養ってきた人を見る目は、どうしてもそうした「心優しい人」や「傷ついた人」を見抜く方向に偏りがち。自分のことだけを考え、相手を人とも思わないような傲慢なタイプと向き合うには練習不足なのです。またこのような仕事をする人たちにとっては、占い師はあくまでも原材料、加工するだけのものです。占い師がどんな目に遭おうとも気にもなりませんし、自分がどんなに酷いことをしているかも考えません。相手が爪の先ほども考えていないことを、こちら側からキャッチするのは難しいことです。

さらに多くの場合、このような人たちは占い師相手だけではなく、他の人に対しても相手を材料扱いするようなビジネスを展開してきて、それなりに収益を上げていることが多いのです。そうですよね、正当な利益分配をしなければ、自分は儲かるのが当然です。だからよけい、自信に溢れているのです。そして、その自信が相手を信頼させるオーラになります。英語では詐欺師のことを A Confidence Man (自信のある人)と呼ぶくらいですからね。

相手をしっかり調べて

法律的に詐欺、とされるような犯罪行為ではなくても、不当に利用されるような詐欺的ビジネスに引っかからないようにするには、まず、何事も納得できるまで回答しないことが大切です。そしてできるだけ早期にプロジェクトの企画書をもらって、ビジネスの全体像を説明してもらうようにしましょう。もちろん、お金の話は文書かメールなどで文字に残してもらうようにして、少しでも不審な点は必ずその場で説明してもらうようにしましょう。

そして、話を持ってきた人だけではなく、関係者全員のバックグラウンドチェックもきちんと行ってください。え、そんな探偵でもないのに無理!と尻込みしなくて大丈夫。このために意外に効果的で簡単なのが、他の、できれば先輩の占い師にその人の評判を聞いてみることなんです。こんな良いビジネスを横取りされたくない!などと身構える必要はありません。本当にあなたを見込んで声をかけてくれた人ならば、他の人にすぐに乗り換えるようなことはしませんから。

だから、あなたは「誰々という人(会社)を知っていますか?何々系のビジネスらしいんだけど」という雑談をするだけで良いのです。占い業界は良くも悪くも狭いところ。なので、多くの場合は、ビックリするほどの情報が集まってくるはずですよ。占い稼業は理解者もあまり多くないビジネスなので、何かあってからでは救済の手が及びにくい傾向もあります。だからこそ、自分の身は自分で守りましょうね!

著者について

ヘイズ中村は子供の頃から神秘の世界に魅せられ、長じて占い師、魔術研究家になりました。とくにトート・タロットに惹かれて『決定版・トート・タロット入門』も執筆しました。隙間時間には下手の横好きなレース編みをしたり、異次元に想いを馳せられるSF映画など楽しんだりしています。

ヘイズ中村は下記のサイトでも活躍しています。ご意見や質問などお待ちしております!