断るという勇気

あなたは悪くないのです

「講座全部で五万円と謳っているのに、実際にはもっとたくさんの金額を請求された」とか、「卒業証明書は五十万円です、それがないと受講する意味がないですよ、などと複数の人から迫られて怖かった」という話は、それこそ文字通りの「耳タコ」状態でよく聞きます。しかし不思議なのは日本全体がどんどん景気が悪くなっていく一方だというのに、こうした講座経営がいつまでも生き残っていること。毎日の買い物で数円単位の違いにため息をついている人たちが、どうしてこんなところにひっかかってしまうのでしょうか。

あくまでも私見ですが、精神世界の悪徳講座には大きく分けて二種類の悪徳さがあると思っています。その一つはわかりやすく、法外な金額を請求する講座、でしょう。あとで聞くとどうしてそんな大金を払ったの?!としかいえないのですが。こうした悪徳講座がいつまでもなくならない原因は、正直、そこに行った人が「支払ってしまうから」だとしか、いえないでしょう。人間、一度成功した悪事は何度でも繰り返すもの。タロット・カードのスプレッドを一つか二つ教えて、それで受講証明書は五十万円です、と言われた時に「そんなバカなものに大金は支払いません!」と断言する人がほとんどだったり、消費者センターに通報されることが増えれば、こうした詐欺師たちは、悪徳講座ビジネスはやめるはず。どうせまた、何か他の詐欺は始めるのでしょうけれど。

占い業界が長い私から言わせれば、そんなインチキ証明書なんて、持っているだけで「私はバカです」という証明以外のなんにもなりません。そのてのビジネスをする講座など、ろくなことも教えませんから、何もわかっていないのだな、という悲しい証明にもなりますけれどね。だから、証明書が云々と高額の料金を請求されたら、さっさとその場から退出しましょう。

ノーという勇気

別にセクハラやパワハラではなくても、何かを強制されたときにまず大切なのは、はっきり「ノー」と答える勇気です。日本の女性は幼い頃から、相手が気を悪くしないようにと躾けられていますから、こんなことを言ったらいけないのではないか、という無用な「気配り」が先に立ってしまうのでしょうが、とにかく嫌なこと、無理なこと、納得できないことは拒絶しましょう。複数人に取り囲まれたら「警察に電話します」と言えば良いのです。それもできないのであれば、あなたは精神世界の事柄を扱う能力はありません。

何も教えないなんて!

そしてもう一つの悪徳講座の典型は、講座と銘打っているのに蓋を開けてみたら市販の本からコピペしたような意味だけを延々と羅列して「はい、これを覚えてくださいね。覚えられなかったら次に進めません」と宣言。十回分くらいの金額を最初に取っているのに、第一回から次までは「まだ覚えていないの?努力が足らないですね!」で全然進めないというタイプです。誰だって、本数冊分の意味なんてそうそう暗記できませんから、結局は一回の講座らしきものだけで、まとまったお金をとってドロン(古いかな、わかるよね)で終わり、というタイプ。

こうして文字にするとあまりに酷いとわかるのですが、悪質なのは初めて占いの講座に来る生徒さんを「あなたがダメだ、努力が足りない」と追い込んで、自分が悪いのだ、能力が足りないのだ、と萎縮させてしまうことでしょう。そうして、罪悪感をしっかり植え付けてから講座を中止してしまいますから、生徒さんは自責の念だけを抱いて、どこにも苦情を言おうなどとは考えないのです。

あなたは悪くない

とにかく!いくら精神世界の講座だからといっても、常識的なビジネスからかけ離れたやり方などしていいわけはありませんし、受講する人を怒鳴ったり、貶したりしていいわけなどないのです。しばらくたってからでも、酷いことをされたと気づいたら、必ず消費者センターや警察に届け出ましょう。相手は詐欺師なのですから、あなたが騙されてしまうのは、ある意味、当然なのです。恥に感じることはありません。

そして、受講中の講座がどうも怪しいと思ったら、途中でもやめてしまいましょう。それもまた、勇気のいることでしょう。でも、詐欺師と長期間、交流して良いことなど一つもありません。あなたには、これは間違っている!と声を上げる権利、そして立ち去る権利もあるのです。それを忘れないでください。

著者について

ヘイズ中村は子供の頃から神秘の世界に魅せられ、長じて占い師、魔術研究家になりました。とくにトート・タロットに惹かれて『決定版・トート・タロット入門』も執筆しました。隙間時間には下手の横好きなレース編みをしたり、異次元に想いを馳せられるSF映画など楽しんだりしています。

ヘイズ中村は下記のサイトでも活躍しています。ご意見や質問などお待ちしております!