タロットの記憶術
意味を覚える近道はこれ
トート・タロットを使いたいけれど、一般的なタロットより情報が桁外れに多くてとても覚えきれない!という悲鳴に近いご相談がよく寄せられます。情報が多いのは確かですが、ちょっと落ち着いて考えてみれば、意外な近道もあるはず。今回はそのお話をしたいと思います。
トート・タロットのアテュ(大アルカナ)一枚には、一冊の書籍分以上の情報が入っている。それは私自身もよく感じていることです。そのせいで、使いたいけれどその前に覚えることが多すぎて、実践まで到達できない、という悩みもよくわかります。ただちょっと冷静になって理解していただきたいのは、トート・タロットなど魔術系タロットを使って「占う」のと西洋神秘学の「学習をする」の間には、エベレスト山脈並みの差があるという事実です。
今回は、トートで魔術や神秘学を研究したい、という人の場合は別のお話として区別させてください。というよりは、そのような研究はトート以外であっても一生涯、続けていかねばならないもの。ここまで覚えたらテストには受かる!といった試験勉強的なものではないからです。なので、そのためには腹を括って頑張るしかありません。
でもそこまでの決心はない、まずはシンプルに占いから始めてみたい、と考えておられるのであれば意味を覚えるのは刺して難しくはありません。一般的なタロットにはあまり意味づけの法則がないので、一枚、一枚の意味を正位置、逆位置でバラバラに記憶しないといけませんが、トートやゴールデン・ドーン・タロットといった魔術系タロットの場合、まず逆位置がありません。そして厳密にいえば、小アルカナには個別の意味はほとんどなく、次の法則に沿って意味を取ればいいだけなのです。
その法則とは「四大エレメント x 生命の木のセフィラー x 七惑星」というもの。この三つの意味を掛け合わせて想像できる範囲から、自由に意味を汲み取っていけば良いだけなのです。そしてコートカードも、ほとんどが四大エレメントの比率だけで意味ができていますから、これも個別に覚える必要はなし。ということで、四大エレメント、カバラの生命の木、基礎的な占星術、を覚えるだけで、大体、ことは足りるのです。そして果てしない研究が必要そうな大アルカナでさえ、最初は対応している生命の木のパスを見ながら知識を増やしていくことはできるのです。
と書いていたら、モニターの向こう側からいろんなものが投げつけられてくるイメージも湧いてきました。うわー、やめて、コーヒーとか、食べ終えたコンビニ弁当の容器とか、バナナの皮とか投げないでください〜〜。だって、タロット・カードを正しく使いたいならば、それとペアにできる占星術の基本は必須ですし、いわんや西洋系の占いには四大エレメントの理論はもう基礎中の基礎なのです。生命の木だって、覚えるのは10個のセフィラーと22のパス、の32個だけです。これくらいは頑張りましょうよ。
ここに注意
ここでのコツは、最初から全てを関連づけて覚えようとしない、ということに尽きます。占星術は惑星の意味、星座の意味、ハウスの意味を個別に覚えていく。生命の木も、四大エレメントも、他と絡めずにそれだけを覚えていくのです。それって、いくら覚えても無駄になってしまうのではないか、と不安を感じるかもしれません。でも大丈夫、人間の脳はある程度以上の情報を供給されると、自然にその間の相関性を見つけて連結していきます。一生懸命、関連させようとしてエネルギーを使うよりは、自然な流れに任せてしまって、自分はその間にもっと他の知識を入れていこうと割り切った方が効率的ですし、ずっと楽なはずです。
別にタロットの意味に限ったことではなく、こうした現象は日常生活の中でもしょっちゅう起きているはずです。引っ越したばかりで右も左もわからない、と思っていた土地が、買い物に行ったりしているうちに、ある日を境に抜け道まですすっと「見えて」くることがあるように。タロットでもその現象は起こってくるので、自分の脳みそを信じて任せちゃいましょう。
そして逆説的に感じるかもしれませんが、覚えよう、と意識する必要もないのです。とにかく最初はたくさんの情報を仕入れておくだけで大丈夫。逆に覚えようとして範囲を狭め過ぎてしまうと、頭の中は自分が既にもっていた他の情報と勝手にリンクを作ろうとします。有名な例は、70年代に流行った、ウェイト版の「審判」の画像をエイリアンの襲来と結びつけちゃった飛んでも理論でしょうね。そうならないように、ちゃんと関連している情報をひたすら、頭の中に放り込んでいきましょう。
ここまで読んできて、あれれ、結局覚えることはあるじゃんか、と思った方、そうです、それは当然なんです。ただ、覚えるのにも効率的で比較的楽な方法と、汗水垂らしてもあまり効果が出ない方法がある、ということは知っておいて損はないでしょう。とかく、精神世界では必要な努力と不毛な苦行を混同した言動が見られますが、できるだけ効率よく動いた方が良いに決まっているのです。
関連させるなら絵と
共通項を見つけるのは大脳がやってくれるとはわかっていても、それをよりスムーズにして行く方法を採用した方が良いでしょう。それはタロットに描かれている絵と一緒に情報を取り入れることです。単語帳のようなものに意味を書き連ねて暗記しても、それが図柄とつながらなければ、言語化しにくい感情などが入ってこないことに。それではタロットの良さが無くなってしまうので、絵は一緒に覚えた方が良いのです。
さてそろそろ、どこが近道なんだよ、覚えることがいっぱいじゃないか、というご不満のため息が聞こえてくるかと思います。まったく何も努力しなくて良いなんてことは精神世界の学習にはありえないので、それを期待しているならばがっかりするとは思います。でもこの「バラバラに覚えて、頭に勝手に組み立ててもらう」方法は、むやみに丸暗記するよりは遥かに効率的ですし、繋がったときの爽快感は格別!タロットを一度手に取ったならば、これから先、無限に学ばねばならないことも出てきます。効率的にできることは、どんどん取り入れていきませんか?