タロット解説書の選択法

質より量で総当たり

自分に合ったタロット・カードをどう選んだら良いのか、という問題を克服しても、そのすぐ後にやってくるのが「どのタロット参考書を使うべきか」という、よりレベルの高い難問です。しかもこれは、今後のタロット学習の行方を決める重要な決断だといっても間違いではないでしょう。ということで、今回はタロットの参考書を例に挙げながら、精神世界の学習書籍を決めるコツを考えてみたいと思います。

タロット・カードを学ぶ際には、どんな参考書を使用すれば良いですか?という質問は、とてもよく聞かれるものです。ここでは、具体的な書籍をお勧めするのではなく、どうやって良い参考書を選んでいくのかという「過程」についてお話ししていきます。これは、他の精神世界の参考書を買うときにも応用できる方法だと思います。

一番簡単なのは、最初は参考書とタロットがセットになっているタイプのものを購入することでしょう。こうしたセット物は、普通の書籍より制作や販売に手間も費用もかかるので、それなりに知識と能力のある人が書いていることがほとんど。結論からいって、ある程度以上の信頼が寄せられる内容になっているはずです。またセットになっているので、タロットの画像なども細かく説明されていることが多く、カードと見比べながら読むのにも適しています。

でも、そうしたセット物がないタロットの場合は、その次に頼れるのが、タロット・カードの作成者が書いた解説書でしょうか。しかし、タロット制作者の解説書は、えてして独り勝手だったり、専門用語の連発になってしまっている傾向が強いのです。あの分かりやすいウェイト版を作ったアーサー・エドワード・ウェイトの『タロット図解』でさえも、こと書籍の内容となると決して分かりやすいとはいえません。ましてや、クロウリーが書いた『トートの書』などになってしまうと、タロットを解説してくれるどころか新たな謎を提供してくれるだけ、ということになってしまいがちです。学習の最初の参考書には向いていない可能性も覚悟しておいてください。

その場では選びにくい

そしてもう一つの難点は、手で持ったりした感覚からも選ぶことができるカードとは異なり、本は結局、読んでみなければ中身はわからない、ということでしょう。書店で延々と立ち読みするわけにもいきませんから、パラパラっと見た感じで購入して、ハズレだった、ということも多々起きてくるわけです。先輩や講座の講師からのお薦め書籍も、必ずあなたと肌が合うとは限りませんし。最終的には自分で納得できる書籍を見つけ出すしかありません。

さて、ここからは私の経験からのお勧め購入方法です。これがベストだと決めつけているわけでもありませんし、あくまでも一例として聞いていただければ幸いです。まず、できるだけ図書館などを利用しましょう。そこで好きな本に巡り会えなくても、逆にどんな本が合わないのかが分かりますから、気にしないでたくさん、閲覧したり、借りたりしましょう。そして、借りるときには「新説発見!」とか「独自理論」などという謳い文句があるものは、避けましょう。たいていは、著者の思い込みだけが並べられていて役に立ちませんから。つまらないと感じた本は、最後まで読まなくても良いのです。でもできれば、書籍の後ろの方に載っている「参考文献」の一覧はメモっておくようにすると後で役に立ちます。

次に有用なのが古書店です。初心者向けの占い書籍は、勉強しようと意気込んで買ったけれど諦めてしまった、という人が売り払うので、たいていの古書店にかなり充実した品揃えが並んでいることが多いのです。古本ですから、価格もリーズナブル。ガンガン、買ってください。気に入った書籍に書き込みしたりして熟読するのも、古本ならばあまり気になりませんし、合わないなと思った本は綺麗なうちにまた売ってしまうことも可能ですから。びっくりするほど昔の書籍にも巡り会えたりするので、古書店でのショッピングは楽しめる時間になるでしょう。

読むしかないのです

と、ここまできて「っていうことは、読むことでしか選べないわけ?ジャケ買いみたいな秘法はないの?」と思ったあなた、はい、その通りです。まずは斜め読みでも飛ばし読みでも良いですから、該当の書籍を読んでみるしかありません。ざざっと斜め読みして、どこかピンとくるものがあったら、今度はじっくりと読み直していくようにしましょう。逆にいえば、ピンとくる箇所がない参考書など、いくら読んでも頭に入りません。後の学習のために取っておくか、一度処分してしまうかはあなたの自由ですが、ともかく、今のあなたに不要な書物なのは確かなのです。

第一線で活躍している占い師や精神世界の執筆家の多くは、顔パスで話が通じる古書店を知っています。それはその人が有名だから、ではありません。学習を始めた頃からたくさんの書籍をそこで購入したり、不要な書籍を買い取ってもらったり、ということを気が遠くなるほど繰り返してきたから、に違いありません。書籍にそんなにお金は使いたくない、と思うのであれば、正直なところ、こうした学習は諦めた方が手っ取り早いかもしれません。

また最近では、本を読むのが苦手(あるいは嫌い)なので、動画で勉強したいのですが、という相談を受けることも増えてきました。私もときどきは動画でお話をさせていただいていますが、大抵の場合はちょっとしたダイジェスト的な情報しか入れることができません。本来、書籍というものは、そのようなダイジェスト知識の背景や根拠といった情報をしっかりと学ぶためのものであるはず。だから、本は読みたくないから動画で、というのは学習にはなりませんし、いわば本末転倒なアプローチである、と理解しておくべきでしょう。

少し落ち着いてきたら

そんなふうにして、最初の一冊、あるいは数冊、が決まってきたら、じっくりと読み込みましょう。そしてここで役に立つのが、本文だけではなくて後ろに列記されている「参考文献」のリストです。どうしてここはこうなるのかな、とか、筆者の説明が今ひとつわからない、といった問題が浮かんできたとき。あるいはもっと深く掘り下げた知識を得たいと思ったときには、お気に入りの本の参考文献欄に載っている書籍に挑戦してみましょう。これまでに他の書籍からメモしたらものも含めて、こうした書籍を図書館などで探してみると、その理論ができてくるまでの歴史や背景、あるいは別の識者の意見なども学べるはずです。

そのためにも、この本を買おうかな?と思ったときには、まず後ろを見てください。そこに全く参考文献が載っていない場合は、その本の筆者が、他の人の研究を自分のもののように受け売りしているだけだったり、役に立たない自説を書き並べいるだけだったりしますから、避けた方が無難なのです。とはいっても、こうした書籍がすべてダメな悪書だと主張するつもりはありません。ただ、学習を始めたばかりの頃に貴重な時間とお金を費やすものではないのは確かです。もっと経験を積んで、玉石混交の知識を自分でふるいにかけられるようになってから、楽しむようにするべきでしょう。

余談ですが、学習を始めて一年くらい経つと、自室にあった本棚の棚が落ちてしまった、という状態になる人は少なくありません。あなたが今、単身者用の賃貸住宅に住んでいるのであれば、やがては床が抜けてしまうこともありえます。本棚は丈夫なものに買い替え、本の保管場所は家の構造をよく考えてから決める必要も出てきます。これは決して誇張ではありません。

そんな苦労を重ねていくうち、きっと「この本を探していた!!」という一冊との遭遇がやってきます。そのときの感激は、生涯の親友や、愛する伴侶を見つけたときに近い幸福感があるはず。その瞬間を目指して、明日も本棚の前で楽しく悩み続けてください。

著者について

ヘイズ中村は子供の頃から神秘の世界に魅せられ、長じて占い師、魔術研究家になりました。とくにトート・タロットに惹かれて『決定版・トート・タロット入門』も執筆しました。隙間時間には下手の横好きなレース編みをしたり、異次元に想いを馳せられるSF映画など楽しんだりしています。

ヘイズ中村は下記のサイトでも活躍しています。ご意見や質問などお待ちしております!